アメリカ中間選挙とES細胞研究(2)
--- 2006年11月11日
これも周知のことだが、カリフォルニアは、いくつかの関連企業が本社を置いていることなどもあって、幹細胞研究が推進されてきた州である。
今回の中間選挙では、カリフォルニア以外の地域でも、幹細胞研究支持派とされている候補者たちが勝利をおさめたが、現地紙『サンフランシスコ・クロニクル』は、選挙の後もカリフォルニアは同分野における優位に立ち続けるだろう、という予測を紹介している。
幹細胞研究の雰囲気に変化
Climate change for stem cell work民主党がブッシュの予算制限を覆すかもしれない
バーナーデット・タンシー、『クロニクル』スタッフ・ライター
金曜日、11月10日、2006年政界は長いあいだ幹細胞研究を制限してきたが、火曜日〔11月7日〕の選挙は、それに刺激を与えたかもしれない、と産業界の事情通たちは言う。
幹細胞研究は、11月7日のレースの熱いトピックであった。それへの支持は、成功をおさめた多くの候補者にとってはセールスポイントであった。たとえばミズーリ州では、民主党の候補者クレア・マクキャスキルが、現職の上院議員ジム・タレントを打ち破った。その一方で同州の有権者たちは、幹細胞研究を行なう権利を確立する、州の憲法の修正案を可決した。
下院議長の候補である、民主党サンフランシスコのナンシー・ペロシ議員は、自分は、幹細胞への政府予算の制限を覆すことを、新しい議会の最初の100時間以内における最優先事項の1つにするつもりだ、と言った。
このことは、保守的な政治的雰囲気からの変化を示唆する。ブッシュ政権は5年以上、ヒト胚由来の幹細胞への連邦予算を制限してきたのだ。
アラメダの幹細胞企業「アドバンスド・セル・テクノロジー」のような企業は、議会がブッシュの制限を覆す可能性に注目している。
このような変化は、主として学術界の研究室を利することになり、その一方で、この分野の企業は巨額のカネを得るに違いない、とアドバンスド・セル・テクノロジーの責任者マイケル・ウェストは言う。倫理的曇り
しかしウェストは、このことの根本的な利益は、一部のベンチャー企業や巨大製薬企業に幹細胞プログラムへの投資を控えさせてきた論争の影を取り除くことだろう、と言う。
「このことは、産業界を覆っていた、この種の倫理的曇りethical cloudを取り除くことになりえます」とウェストは言う。
学術界の研究室は、その発見を、バイオ企業にライセンス供与する。バイオ企業はしばしば、そうした治療法を市場化するために巨大製薬企業とパートナーシップを築く。
2001年8月、ブッシュ大統領は、初期ヒト胚の破壊----彼が子どもを殺すことを比較したプロセス----を通じて新しい幹細胞株をつくるために連邦予算を使うことを制限するために活動した。
彼は、国の研究予算の供与を、体性幹細胞adult stem cellsと、彼の命令以前につくられた胚性幹細胞株embryonic stem cell linesにおける研究に制限した。その年、下院は、胚性幹細胞研究を有罪とする法律を承認した。
しかしこの政治的風向きは、幹細胞技術が自分の麻痺状態を治療するだろうと信じていた、故クリストファー・リーブのようなセレブによって促されて、患者団体が活動したことにつれて変わり始めた。7月には、共和党に支配されていた議会は、ブッシュの予算制限を撤回しうる超党派法案を通過させた。大統領はそれをすぐに拒否した。〔大統領〕拒否権の無効化
火曜日の共和党支配の敗北において、幹細胞の擁護者たちはいまでは、自分たちが〔大統領〕拒否権を無効にするのに必要な3分の2という多数を得ているかどうかを計算している。
「その既知の状態にもとづいて、私たちは、拒否権に抵抗できる上院を得ました」とロバート・クラインは言う。彼は、カリフォルニアの300万ドルもの幹細胞研究プログラムを確立した「2004提案71イニシアティブ2004 Proposition 71 initiative」キャンペーンの陣頭指揮を執った。「この挑戦は、下院へのものです。下院では、私たちは共和党サイドに約35票を必要とします」
共和党は、火曜日の選挙結果による同法案への支持をそれほど恐れはしないだろう、とゲイル・プレスバーグは言う。彼は幹細胞研究の擁護者であり、この問題をめぐる政治についての近刊予定の本の共著者である。
プレスバーグは、10数もの全国的なレースに言及する。ミズーリ州における上院選挙戦と幹細胞修正案stem cell amendmentはその典型であり、そこでは研究の支持者たちが勝利した。
「ミズーリ州は、いわば太平洋岸の州ではありません」とプレスバーグは言う。
しかし、オークランドにある「遺伝学・社会センター」のマーシー・ダルノブキは、この選挙における幹細胞問題へのインパクトは不明瞭だ、と言う。というのは、この論争は「歪んだレトリック」によって混乱させられているからだ、と。さらに重要なことに、そのほかのキャンペーン・イシューが、選挙結果の決定にもっと影響したのかもしれない。同センターは幹細胞研究を支持しているが、慎重な倫理的取締りを推奨している。カリフォルニアの優位
クラインは、この政治的ムードが揺り戻されるかもしれないと認めた。このことによって、カリフォルニアは同分野の最前線に居続ける、と彼は言う。というのは、「提案71」は、少なくとも12年間続きうる幹細胞研究予算の流れを確立したからだ、と。このことは科学者たちや企業を、自分たちはその予算を突然断たれることなく同分野に没入できる、と安心させた。
「2年間のわずか1会期の予算割り当てに依存しているわけではないことを理解しなければなりません」とクラインは言う。E-mail Bernadette Tansey at btansey@sfchronicle.com.
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URL: http://sfgate.com/cgi-bin/article.cgi?file=/c/a/2006/11/10/BUG4NM8VG024.DTL
その一方で、投資関係者たちに読まれているらしい「ブルームバーグ」のニュースサイトは、幹細胞関連企業の株価の上昇を伝えている。
幹細胞の株、民主党勝利が支持を示唆するに応じて上昇(更新2)
Stem Cell Stocks Rise as Democrat Wins Signal Support (Update2)ジョン・ラウラマン
11月8日(ブルームバーグ)----アドバンスド・セル・テクノロジー社やジェロン社などの幹細胞企業は、アメリカの下院および上院における民主党の勝利に応じて持ちなおしており、研究への連邦予算の増加への望みを膨らませている。
カリフォルニア州メンロパーク本社のジェロン社は約5パーセントの上昇、カリフォルニア州アラメダ本社のアドバンスド・セル・テクノロジー社は約17パーセントの上昇。ミシガン州アナーバー本社のアーストロム・バイオサイエンス社は約11パーセントの上昇。
2001年、ジョージ・W・ブッシュ大統領はヒト胚性幹細胞への研究予算を制限し、自分は胚の破壊に反対する、と言った。ミズーリ州の有権者たちは、幹細胞研究を擁護する憲法修正案を通過させることによって〔ブッシュの政策に〕対抗し、ほかの州の民主党員たちもその制限に対するキャンペーンを明確に行ない、糖尿病やパーキンソン病、そのほかの障害の治療における幹細胞の展望に言及した。
「この選挙は、アメリカ人の大多数は、この研究が前進してほしいと思っていることを示してます」とレオナルド・ゾンは言う。彼はボストン小児病院におけるハーバード大学の研究者で、ヒトES細胞を研究している。「彼らは、それがなぜ阻止されているのかわからないのです」
アーストロムの株は14セント、すなわち9.4パーセント上昇し、ナスダック株式市場の総合取引では、11時32分現在、1.63ドルである。ジェロンの株は26セント、すなわち3.1パーセントの上昇で8.64ドル。サイトリ・セラピューティクス社の株は11セント、すなわち2.7パーセントの上昇で4.25ドル。バルチモア本社のオシリス・セラピューティクス社は66セント、すなわち4.1パーセントの上昇で16.66ドル。アドバンスド・セルの株は、場外取引において9セント、すなわち11パーセントの上昇で90セント。ブッシュのスタンス
ミズーリ州では、有権者たちは、AP通信によれば、数えられた投票区の98パーセントで、51パーセント対49パーセントという差で幹細胞修正案を通過させた。この法案は「ミズーリ幹細胞研究および治療イニシアティブMissouri Stem Cell Research and Cures Initiative」とも呼ばれ、アメリカ政府によって認められる幹細胞治療および研究すべてがミズーリ州で行なわれうることを保証するものである。
この修正案は、民主党のクレア・マクキャスキルと共和党現職のジム・タレントとのあいだのアメリカ上院選において、イシュー〔主題〕となった。パーキンソン病を患う俳優マイケル・J・フォックスは、マクキャスキルのテレビコマーシャルに登場し、彼女は幹細胞法案を支持しているので、彼女を支持するよう有権者に求めた。マクキャスキルは勝利した。
下院における民主党の優位性は、巨大製薬企業に対し、胚性幹細胞研究への投資を増やすよう促すことになるだろう、とステファン・ブロザックは言う。彼はニュージャージー州ウェストフィールドの「WBBセキュリティーズ」のアナリストである。「最初のステップ」
「このことは、この分野の研究はできないという認識の撤回において、重要であり、最初のステップです」と、ブロザックは本日の電話インタビューで言う。「これは彼らを、買収と協力へと向かわせるかもしれません」
幹細胞をめぐるブッシュのスタンスは、彼の2001年における制限の発表以来、賛否両論を呼んできた。共和党優位の上院は、63対37で、ブッシュの政策を覆す意思表示を行なった。彼の政策は、2001年以前に〔訳注:「before 2001」とあるが、「after」の間違いか〕つくられた胚性幹細胞株の研究への連邦予算を禁止していた。
ブッシュは24時間以内にその法案を拒否するための、同政権初の拒否権を行使した。
その政策は、新しくつくられた幹細胞株を使うどんな研究にも政府予算の使用を禁止している。たとえば、2003年にハーバード大学のダグラス・メルトンがつくったものもそこに含まれる。メルトンの幹細胞は、ブッシュ政権が認めたものよりも、約2倍も、研究者たちによって使われてきた。その理由は主として、それらが安くて、素早く成長し、扱いやすいからである。
多くの幹細胞研究者たちは、新しい幹細胞株を研究するために民間の提供者からのカネを使う一方で、ブッシュの政策に準拠しない研究に連邦予算を使い続けるために、その研究室を分割してきた。この記事の記者への連絡:ボストンのジョン・ラウラマン jlauerman@bloomberg.net
最新更新:2006年11月8日、東部標準時11時58分
なお、この場合、「株」というのは、「line」ではなく、「stock」または「share」の訳語である。和訳すると、シャレになってしまうのが皮肉である。06.11.11

